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2025.12.22

ネットで買える「格安マウスピース矯正」は本当に大丈夫?歯科医院での治療と決定的に違う「安全性」と「責任」の話

こんにちは。愛知県津島市の歯医者、たかしま歯科 院長の高嶋 俊裕です。

近年、SNSやインターネット広告で、「月々数千円から」「通院不要」「自宅で完結」といったキャッチコピーとともに、非常に安価なマウスピース矯正の広告を目にする機会が増えました。歯科医院に通うことなく、送られてくるキットで歯型を採り、郵送されたマウスピースを装着するだけで歯並びが治るという手軽さは、忙しい現代人や、費用を抑えたい方にとっては非常に魅力的に映ることでしょう。当院に来院される患者様の中にも、「ネットの矯正と、歯医者さんの矯正は何が違うのですか?」「安く済ませたいのですが、ネットの矯正でも同じような効果が得られますか?」と質問される方が増えています。

しかし、歯科医師としての立場から正直に申し上げますと、こうした「歯科医師の直接的な管理下」にない格安マウスピース矯正には、非常に大きなリスクが潜んでいると言わざるを得ません。歯を動かすということは、人体に対して外科的な変化を加える「医療行為」です。そこには、医学的な診断と、経過に伴う微調整、そしてトラブルが起きた際の即座の対応が不可欠です。

今回は、なぜ歯科医院での矯正治療が必要なのか、ネット通販型の矯正とは決定的に何が違うのか、そしてご質問にもあった「もしトラブルが起きた場合、どのようなリスクがあるのか」について、専門家の視点から詳しく解説していきます。安さの裏にあるリスクを知り、ご自身の体を守るための判断材料にしていただければ幸いです。

目次

  1. 根本的な違いは「診断」にあり。レントゲンもCTも撮らない恐怖
  2. 「歯並び」は綺麗になっても「噛み合わせ」が壊れるリスク
  3. 治療中の微調整ができない?「歯が動かない」トラブルへの対応力
  4. 【質問回答】トラブル発生時のリスク:神経の壊死や歯の喪失、そして「矯正難民」
  5. 最終的なコストはどちらが高い?「リカバリー治療」の現実
  6. まとめ

1. 根本的な違いは「診断」にあり。レントゲンもCTも撮らない恐怖

ネット通販型のマウスピース矯正と、歯科医院で行う矯正治療の最大の違いは、治療を開始する前の「診断の質」にあります。多くの格安サービスでは、ご自身で採った歯型、あるいは提携スタジオでの簡易的なスキャンデータのみを基にマウスピースを作製します。しかし、私たち歯科医師からすると、レントゲンやCT撮影を行わずに歯を動かす計画を立てることは、目隠しをして車を運転するようなものであり、恐怖すら覚える行為です。

なぜなら、歯茎の下には「歯の根っこ(歯根)」と、それを支える「顎の骨(歯槽骨)」があるからです。見えている歯の部分(歯冠)だけを見て歯を動かそうとしても、骨の中に埋まっている歯根がどのような形をしているのか、長さは十分か、曲がっていないか、骨の厚みは十分にあるか、といった情報は分かりません。もし、歯周病が進行していて骨が溶けていることに気づかずに力をかければ、歯は簡単に抜け落ちてしまいます。また、歯根が短い歯に強い力をかければ、根っこがさらに溶けて短くなる「歯根吸収」を引き起こし、歯の寿命を縮めてしまいます。

さらに、顎の関節の状態や、親知らずの影響、隠れた虫歯の有無など、トータルでの診断が必要です。歯科医院では、これらをレントゲンやCT、触診、歯周病検査などで徹底的に調べ上げ、「この歯は動かしても安全か」「どの程度までなら動かせるか」という医学的根拠に基づいて治療計画を立案します。この「見えない部分の診断」こそが、安全な矯正治療の命綱なのです。そのプロセスを省略してコストを下げている格安矯正は、安全性を犠牲にしていると言っても過言ではありません。

2. 「歯並び」は綺麗になっても「噛み合わせ」が壊れるリスク

多くの格安マウスピース矯正は、基本的に「前歯の見た目」を整えることに特化しています。奥歯を動かすことは難しいため、対象外としているケースがほとんどです。「前歯だけでいいから安く済ませたい」という患者様のニーズには合致しているように見えますが、ここにも大きな落とし穴があります。それは、前歯を動かすことで、全体の「噛み合わせ」が崩れてしまうリスクです。

人間の歯は、親知らずを除く28本が互いに支え合い、絶妙なバランスで噛み合っています。たった1本の歯の位置が変わるだけでも、そのバランスは変化します。もし、見た目だけを優先して前歯を並べた結果、奥歯が噛み合わなくなってしまったらどうなるでしょうか。食事がしにくくなるだけでなく、特定の歯に過度な負担がかかって破折したり、顎の関節に負担がかかって「顎関節症」を引き起こしたり、頭痛や肩こりといった全身の不調に繋がったりする可能性があります。

歯科医院で行う矯正治療は、単に歯を並べるだけでなく、「機能的な噛み合わせ」を作ることが最終的なゴールです。前歯を動かすことで奥歯にどのような影響が出るかを計算し、必要であれば奥歯も含めた全体のコントロールを行います。見た目は綺麗になったけれど、前歯が当たって奥歯がスカスカになり、まともに食事ができなくなった、というトラブルは、安易な矯正治療で頻繁に起こり得る事例です。歯は「飾り」ではなく、食事をするための「臓器」であることを忘れてはいけません。

3. 治療中の微調整ができない?「歯が動かない」トラブルへの対応力

矯正治療は、最初に作った計画通りに100パーセント進むことの方が稀です。生体反応には個人差があるため、計画よりも歯が動きにくかったり、予想外の動きをしたりすることが多々あります。歯科医院での治療では、定期的に来院していただき、歯科医師が口腔内を直接確認することで、こうした「計画とのズレ」を早期に発見し、軌道修正を行います。

例えば、マウスピースが歯にフィットしなくなってきた場合、歯科医院であれば、歯の表面に「アタッチメント」と呼ばれるプラスチックの突起をつけて力をかけやすくしたり、歯と歯の間をわずかに削って(IPR)スペースを作ったり、場合によっては一時的にワイヤー装置を併用したりするなど、様々な「手」を使ってリカバリーを行います。

しかし、通院不要のネット矯正の場合、こうした専門的な介入が物理的に不可能です。基本的に、最初に送られてきたマウスピースを順番につけていくだけです。もし途中でマウスピースが合わなくなっても、チャットやメールでのサポートが中心となり、医療的な処置を受けることはできません。その結果、「真面目につけていたのに、歯が動いていない」「マウスピースが浮いてきて入らない」といった状態になっても、解決策がないまま治療が頓挫してしまうことになります。人間の体は機械ではありません。変化する状況に合わせて、プロがその都度ハンドルを切り直す(調整する)ことが、ゴールにたどり着くためには不可欠なのです。

4. 【質問回答】トラブル発生時のリスク:神経の壊死や歯の喪失、そして「矯正難民」

ご質問にあった「トラブルが起きた場合のリスク」について、より具体的にお話しします。歯科医師の直接的な管理がない状態で矯正治療を行い、トラブルが起きた場合、以下のような深刻な事態に陥る可能性があります。

一つ目は、「歯の神経の壊死(えし)」や「歯の喪失」です。適切な力のコントロールがなされず、歯に過度な力がかかり続けると、歯の神経が死んで変色してしまったり、歯を支える骨が急速に溶けて歯がグラグラになり、最終的に抜け落ちてしまったりすることがあります。これらは不可逆的(元に戻らない)なダメージです。歯科医院であれば、予兆が見られた時点で力を弱めるなどの対応ができますが、自己判断で進める矯正では、痛みがあっても「効いている証拠だ」と勘違いして使い続け、気づいた時には手遅れになっているケースがあります。

二つ目は、「噛み合わせの崩壊」による健康被害です。前述したように、奥歯が噛み合わなくなり、食事が摂れなくなったり、顎の痛みで口が開かなくなったりすることがあります。

そして三つ目が、いわゆる「矯正難民」になってしまうリスクです。トラブルが起きてネット矯正の運営会社に連絡しても、「規約の範囲内です」「歯科医院に行ってください」と言われ、返金もされず、治療も中断されたまま放り出されてしまうケースが消費者センターなどに多数寄せられています。しかし、他の歯科医院に行っても、他院(特にネット矯正)で失敗したケースのリカバリー治療は非常に難易度が高く、リスクも大きいため、引き受けてもらえないことが多々あります。結果として、ボロボロになった歯並びと、失ったお金と時間を抱え、どこにも相談できずに途方に暮れてしまう「矯正難民」になってしまうのです。責任の所在が曖昧な治療を受けるということは、こうした「最悪の事態」を全て自己責任で負う覚悟が必要になるということです。

5. 最終的なコストはどちらが高い?「リカバリー治療」の現実

安価な矯正を選んだはずが、結果的に高くついてしまうというケースは決して珍しくありません。もしネット矯正で失敗し、噛み合わせがおかしくなったり、歯並びが中途半端な状態で終わってしまったりした場合、それを治すための「リカバリー治療(再治療)」が必要になります。

このリカバリー治療は、最初の状態から治すよりもはるかに難しく、高度な技術を要します。そのため、治療費は通常の矯正治療よりも高額になることが一般的です。さらに、ネット矯正で支払った費用は戻ってこないことが多いため、結果として「ネット矯正の費用」+「歯科医院での高額な再治療費」という二重の支払いが発生します。

また、お金だけでなく、期間も倍以上かかりますし、何より、無理な動きをさせられた歯や歯茎には大きなダメージが蓄積されており、歯の寿命そのものを縮めてしまっている可能性もあります。 「安物買いの銭失い」という言葉がありますが、医療においてそれは「健康失い」にも繋がります。最初から適切な診断と管理のもとで治療を受けることが、長い目で見れば最も経済的であり、何より安全で確実な道なのです。

まとめ

ネットでの安価なマウスピース矯正のリスクについて解説しました。

  1. 診断の欠如:レントゲンやCTなどの精密検査を行わないため、見えない部分のリスク(歯根吸収や歯周病)を無視して治療が進む危険性がある。
  2. 噛み合わせの無視:見た目だけを優先し、噛み合わせが崩れて健康を害する可能性がある。
  3. 調整力の欠如:治療中の微調整やトラブル対応が物理的にできないため、治療が頓挫しやすい。
  4. トラブル時の責任:歯の神経が死んだり、噛めなくなったりしても、適切な医療的フォローが受けられず「矯正難民」になるリスクがある。
  5. コストの逆転:失敗した場合のリカバリー治療は高額かつ困難であり、最初から歯科医院で行うよりも費用と時間がかかる。

矯正治療は、一生に何度も行うものではありません。だからこそ、目先の安さや手軽さにとらわれず、「誰が責任を持って診てくれるのか」「何かあった時に守ってくれるのか」という視点で選んでいただきたいと思います。 愛知県津島市のたかしま歯科では、精密な検査と診断に基づき、患者様一人ひとりに責任を持ったマウスピース矯正治療を提供しています。もし、矯正治療について迷われていることがあれば、まずは当院のカウンセリングにて、正確な情報とリスクについてお話しさせてください。あなたの大切な歯を守るために、私たちが全力でサポートいたします。

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