2025.10.23
MRC矯正ってなに?口呼吸や舌の癖を治す「お口のトレーニング」と毎日の練習時間を解説
こんにちは。愛知県津島市の歯医者、たかしま歯科 院長の高嶋 俊裕です。
お子様の歯並びを心配される親御さんから、近年非常に多くいただくご相談があります。「子供の歯並びがガタガタしている気がする」「いつもお口がポカンと開いている」「口呼吸を治したいけれど、どうすればいいの?」といったお悩みです。これらのお悩みを解決する手段として、従来のワイヤーを使った矯正治療とは全く異なるアプローチである「MRC矯正(マイオブレース矯正)」が注目を集めています。
「MRCって聞いたことはあるけど、具体的に何をするの?」 「マウスピースをつけるだけじゃなくて、トレーニングが必要って本当?」 「毎日どれくらい練習すれば効果が出るの?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。MRC矯正は、単に歯を並べるだけでなく、歯並びが悪くなる「根本的な原因」であるお口の癖(口呼吸や舌の癖)を治し、お子様の健やかな発育を促す素晴らしい治療法です。しかし、その成功は、お子様ご本人とご家族の「日々の取り組み」にかかっています。今回は、このMRC矯正の仕組みと目的、そして実際に必要な毎日の練習時間や効果について、詳しく解説していきます。
目次
- 従来の矯正と何が違う?「MRC矯正」の基本的な考え方
- 歯並びを悪くする真犯人!「口呼吸」と「舌癖」の怖さ
- 治療の二本柱:「マイオブレース(装置)」と「アクティビティ(訓練)」
- 【質問回答】毎日どれくらい練習すれば効果が出る?スケジュールの目安
- MRC矯正のメリット・デメリットと、成功するための親御さんの役割
- まとめ
1. 従来の矯正と何が違う?「MRC矯正」の基本的な考え方
まず、MRC矯正(Myofunctional Research Co.)が、従来の矯正治療とどう違うのか、その根本的な考え方の違いをご説明します。一般的な矯正治療(ワイヤー矯正など)は、すでに生えそろった歯に対して、物理的な力を加えて強制的に移動させ、歯並びを整える「対症療法」的な側面が強い治療です。
一方、MRC矯正は、「なぜ歯並びが悪くなったのか?」という原因に着目し、その原因を取り除くことで、歯が自然と正しい位置に並ぶように導く「原因療法」です。実は、お子様の歯並びが悪くなる主な原因は、遺伝だけではありません。むしろ、幼少期の「口呼吸」「舌の突き出し」「逆嚥下(飲み込み方の癖)」といった、お口周りの筋肉の機能不全(口腔筋機能不全)が大きく関与しています。
MRC矯正は、日中のマウスピース装着と専用のトレーニングを通じて、これらの悪習癖を改善し、鼻呼吸を習慣化させ、舌を正しい位置(上顎の天井部分)に置けるようにします。顎の骨が成長段階にあるお子様(主に5歳〜12歳頃)に対して行うことで、顎の正しい成長を促し、結果として歯を抜かずに、きれいな歯並びと健康な顔貌を獲得することを目指す治療法なのです。
2. 歯並びを悪くする真犯人!「口呼吸」と「舌癖」の怖さ
なぜ、「口呼吸」や「舌の癖」が歯並びに悪影響を及ぼすのでしょうか。ここを理解することが、MRC矯正の重要性を知る第一歩です。
- 口呼吸(こうこきゅう) お口が常に開いていると、唇の筋肉が緩み、前歯を外側から抑える力が弱くなります。同時に、舌の位置が下がってしまいます(低位舌)。本来、上顎の骨は、内側から舌によって押される力で広がり、成長します。しかし、口呼吸で舌が下がっていると、上顎が十分に広がらず、狭くなってしまいます。その結果、歯が並ぶスペースが不足し、ガタガタの歯並び(叢生)や出っ歯になってしまうのです。また、口呼吸は風邪をひきやすくなったり、アレルギー体質を助長したりと、全身の健康にも悪影響を及ぼします。
- 舌癖(ぜつへき) 飲み込む時に舌で前歯を押したり、舌を突き出したりする癖があると、その強い力によって歯が動き、出っ歯や開咬(前歯が噛み合わない状態)の原因になります。
MRC矯正は、これらの「筋肉のバランスの崩れ」を正すことで、歯並びが悪くなる力を遮断し、本来あるべき成長のレールに乗せてあげる治療なのです。
3. 治療の二本柱:「マイオブレース(装置)」と「アクティビティ(訓練)」
MRC矯正は、単に寝る時にマウスピースをつけるだけの治療ではありません。以下の「二本柱」をセットで行うことが不可欠です。
- マイオブレース(マウスピース型装置)の装着 シリコンなどの柔らかい素材でできた、取り外し可能なマウスピースです。これを装着することで、舌を正しい位置(スポット)に誘導し、唇を閉じて鼻呼吸ができるようにサポートします。また、間違った飲み込み方を防ぐ構造にもなっています。
- アクティビティ(口腔筋機能トレーニング) これがMRC矯正の最大の特徴です。マウスピースをつけるだけでなく、「呼吸」「舌」「飲み込み」「唇」の機能を正しくするための、専門的なトレーニングを行います。当院では、専任のスタッフがお子様の状態に合わせてプログラムを組み、診療室での指導と、ご自宅での宿題(ホームワーク)として実践していただきます。
この2つを毎日継続することで初めて、お口周りの筋肉が正しく機能するようになり、歯並びの改善につながります。「装置をつけるだけ」では、十分な効果は得られません。
4. 【質問回答】毎日どれくらい練習すれば効果が出る?スケジュールの目安
それでは、今回の核心である「毎日どれくらい練習すればいいのか」というご質問にお答えします。MRC矯正を成功させるための、標準的な毎日のスケジュール(ノルマ)は以下の通りです。
- ① マイオブレースの装着時間 「日中1時間」 + 「就寝中(寝ている間ずっと)」 これが基本ルールです。日中の1時間は、テレビを見ている時、ゲームをしている時、宿題をしている時など、いつでも構いません。ただし、お口を閉じて、鼻呼吸を意識しながら装着することが重要です。この1時間の装着が、夜間の装着を安定させ、無意識の癖を治すための重要なトレーニングになります。
- ② アクティビティ(トレーニング)の時間 「1日 2分〜5分程度」を「2セット」 具体的なトレーニング内容は、進捗状況によって変わりますが、例えば「鼻呼吸の練習」「舌を上顎に吸い上げる練習」「水を正しく飲み込む練習」などがあります。一つひとつの動きは単純ですが、毎日コツコツ行うことが非常に重要です。
【効果が出るまでの期間の目安】 これらを真面目に毎日続けた場合、早ければ開始から1ヶ月程度で、「お口が閉じやすくなった」「鼻呼吸ができるようになった」といった変化が現れ始めます。歯並びの変化に関しては、顎の成長を利用するため時間がかかりますが、半年〜1年程度で目に見える変化(ガタガタが減ってきた、前歯が閉じてきたなど)を実感されることが多いです。逆に、練習をサボってしまうと、何年経っても効果が出ないばかりか、治療が失敗に終わってしまうこともあります。MRC矯正は、まさに「努力が結果に直結する」治療法なのです。
5. MRC矯正のメリット・デメリットと、成功するための親御さんの役割
MRC矯正には、素晴らしいメリットがある一方で、理解しておくべきデメリット(難しさ)もあります。
【メリット】
- 抜歯を避けられる可能性が高い:顎の成長を促すことで、歯を並べるスペースを作ります。
- 後戻りが少ない:歯並びが悪くなる「原因(癖)」を治すため、治療後の後戻りが起きにくいです。
- 全身の健康につながる:鼻呼吸が定着することで、免疫力が上がり、姿勢が良くなるなど、歯並び以外の健康効果も期待できます。
- 痛みが少ない:ワイヤー矯正のような強い力で締め付けることはありません。
【デメリット・注意点】
- 本人のやる気と家族の協力が必須:これが最大のハードルです。お子様自身が毎日装置をつけ、トレーニングを行わなければ、全く効果が出ません。「買って終わり」の商品ではないのです。
- 治療期間が長い:成長に合わせて行うため、数年単位の通院と管理が必要です。
成功の鍵を握るのは、実は「親御さんの声かけとサポート」です。毎日練習するように促し、できたら褒めてあげる。就寝中に装置が外れていないか確認する。こうした毎日の伴走が、お子様のモチベーションを維持し、治療を成功へと導きます。
まとめ
MRC矯正と、必要な練習時間について解説しました。
- MRCは、歯並びの原因である「口呼吸」や「舌癖」を治す根本治療。
- 治療は**「マイオブレース(装置)」の装着と、「アクティビティ(筋トレ)」**の2つで行う。
- 毎日のノルマは、「日中1時間+就寝時の装置装着」と、「数分間のトレーニング」。
- 効果が出るには継続が命。サボれば治らないが、続ければ健康な体と歯並びが手に入る。
- 親御さんの毎日のサポートと励ましが、成功の最大の秘訣。
MRC矯正は、お子様への「一生モノの健康のプレゼント」です。大変な時期もあるかと思いますが、その努力は必ず将来の財産になります。 愛知県津島市のたかしま歯科では、MRC矯正の認定を受けたスタッフが、お子様と親御さんを全力でサポートいたします。「うちの子、口が開いているかも?」「歯並びが心配」と思われたら、手遅れになる前に、ぜひ一度当院の無料相談へお越しください。